楮の園Ⅲ
大学で紙漉き工房の先生が育てている楮畑を描きました。楮は、その樹皮が和紙の原料となり夏には緑の面白い形をした葉をたわわにし、その重みに枝垂れそうになりながらも自由奔放に空に向かって成長します。その舞台となる大地を満たす小さな雑草たち、楮と対照的に真っ直ぐな姿勢をした遠景の竹、白い点の集積のリズムをつくる中景のノリウツギの花々、斜めに長く走るアスファルトの直線、空や植物の青みと響く鮮烈なネットの青色、命あるものも無いものも、そこにあったあらゆるものが絵の中では欠かせない構成要素となりました。
描くことによって、三次元空間のあらゆる物に纏わりついている普通の意味や価値が失われ、全てのものが色と形としてフラットに見えてくる時、私はとても嬉しいです。